広い意味での専門は独立以降のラテンアメリカ近現代史、狭い意味での関心は「コーノ・スール」と呼ばれる南米南部諸国における国家と社会との関係をめぐる政治・社会史です。特に、これまで20世紀初頭のチリ・アルゼンチン・ウルグアイの3カ国を事例として、近代スポーツという特異な文化実践の一群が、近代国家形成という政治的プロジェクトといかなる関係性の下で展開してきたかについて研究してきました。
現在は1910年代から30年代初めまでのバジェ=イ=オルドニェス期のウルグアイについて博士論文を執筆しています。ウェーバーを端緒とする制度主義的国家論を理論的枠組みとしつつ、非人格的な権力としての近代国家が社会とどのようにして関係性を築こうとしたのかについて、スポーツ政策という福祉政策の(マージナルだが極めて興味深い)一局面の仔細な分析を通じてアプローチする、というのがこの研究の目的の一番外側の大枠として位置付けられます。
その大枠の中で、バジスモ(バジェが率いたコロラド党内部の改革派勢力、及びその政治志向を包括的に指す)による急進的政治改革とその一部としてのスポーツの位相、二大政党間及びコロラド党内部の政治的対立、その帰結としてのバジスモの停滞、「官僚(公務員)」という社会的アクターの勃興と政治的クライアンテリズムとの結びつき、といったトピックが論じられます。
また、こうしたナショナルな力学と並行して、ウルグアイのスポーツ政策のあり方を定義付けたのが、北米YMCA(キリスト教青年会)とIOC(国際オリンピック委員会)という、当時世界の周縁地域でのスポーツ振興を担っていた国際団体によるグローバルな力学でした。こうした国際団体によるスポーツ振興策とウルグアイのスポーツ政策との関係について、「帝国主義」や「文明化の使命」といった北米・ヨーロッパ的な視点からではなく、むしろこの関係性における小国ウルグアイの主体性、自立性に着目して論じてきました。
最近では、上記から派生して北米YMCAの海外宣教プロジェクト全体を視野に入れたラテンアメリカと東アジアとの比較や、(YMCAもその一部であった)南米におけるプロテスタント宣教の歴史、そして20世紀初頭のプロテスタンティズムとパン・アメリカニズムとのかかわりなど、スポーツ史の外にも関心を広げています。
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